地域を良くしたい!傾聴を通して活動を広げる~ 丹下美幸さん

カテゴリ名:
社会貢献

すぐに始められるボランティア活動もあれば、知識や技術を学んで活かすものもあります。今回紹介する「傾聴」ボランティアは、後者。ただの話し相手ではなく、「傾聴」を講座で学び、実践に活かしている丹下美幸さんにお話しを伺いました。

聞くことが好き」から「傾聴」にたどり着くまで

仕事をしていたころから、不思議とお年寄りのお話を聞くことが多かったという丹下さん。年配の女社長の秘書をしていた時には、「私の生涯記を書いてほしい」と請われたこともあったとか。顔見知りのお坊さんと話をする機会があり、その時に言われた「あなたは、おばあさんの話を聞くのがいいね」という一言が心に残っていたものの、それからしばらくは目の前の仕事に追われる日々を過ごしていました。

そんな丹下さんが傾聴と出会うことになった大きなきっかけは、お義父さまの介護でした。家族というごく近い存在であるがために、様々な面で大変さを味わったといいます。「施設の職員の方が来てくださることがありがたくて。(家族を自分で)介護している人は、みんな苦労しているんだろうな、と思っていました」

傾聴のことも気になってはいたものの、個人で何かを始めるきっかけがないまま、時が経っていました。そんな折に、たまたま市報でボランティア活動センターが傾聴講座を開くということを知った丹下さん。かつてのお坊さんの言葉なども思い出し、思い切って受講を決意したのでした。

講座で学んだ傾聴の深さ

 

「傾聴」とは、「話し手の言う事を真剣に聞き、受け止める事で、話し手が自分自身の力で気持ちを整理したり、解決策を発見したりするのを支援する事」。

(ボランティアWikiより。http://vpark.net/wiki/index.php?title=%E5%82%BE%E8%81%B4

ただおしゃべりを聞くだけなら、誰にでもできそうに思えるかもしれませんが、意見や感情を挟まずに「聴く」ということは実はとても難しいことなのだといいます。

(イメージ)

丹下さんが受講したのは、ボランティア活動センターこくぶんじが「特定非営利活動法人 パートナーシップ アンド リスニング アソシエーション(NPO法人 P・L・A)※」に依頼して開催された講座。4時間の講義を5回、計20時間すべてに参加でき、その後の実践にも関われることが条件の“本気の”内容でした。座学でしっかりと学んだ内容を元に受講者同士で傾聴し合う時間には、様々な発見があったといいます。

※ http://pla-keicho.org/

「聴いてもらう、という体験がとても新鮮で。こんなに楽になるんだ、と。聴くということは簡単で、深い。実践をしてきて思うのですが、相手が何を言いたいのかを、こちらがパニックにならずに聴くということは、講座なしでは難しかったと思います。今振り返ると、かつてお年寄りの方の話を聞いていた時は、『もっとこうすればいいんじゃない?』なんてアドバイスしようとしたりして。しっかり聴けていたとは言えませんでしたね」

講座で互いに「傾聴」をし合うことで相手の深い部分に触れ、信頼できる仲間となっていった受講生たちは、同じ傾聴講座の第一期生が立ち上げたグループ「かたらい」の二期生として加入。丹下さんの傾聴活動も、ここからスタートしたのでした。

仲間と支え合うから続けられる   

「かたらい」は、現在、市内数カ所の施設への訪問活動を行っています。施設側から直接要請があったり、ボランティア活動センターを通して繋がったりという中で、活動の場が広がっているのだそうです。はじめのうちは、まだ「傾聴」=お話し相手といった認識をされることが多く、断られたり、大勢の輪の中に入っておしゃべりをするだけ、ということもありました。それはそれで良いこととしながらも、傾聴の良さを知ってほしい、傾聴の実践をしたい、という想いを絶やさずに施設に話しを続け、次第にその意義が理解されてきたといいます。

専門的な知識と技術(テクニック)を用いるとはいえ、相手の話を「聴く」ということは、やはり気楽なものではありません。活動をするうえで大きな支えとなっているのが、仲間の存在。「傾聴」を共に学び合い実践してきた仲間ですから、守秘義務の下、じっくりと話しを聴いてもらい、安心して心をほどくことができるのです。

「仲間とファミレスでお茶をゆっくり飲むことが最高のリフレッシュ」という丹下さん。「かたらい」のグループ活動の他に、個人で高齢者の見守り訪問もされているということですが、グループ活動のつながりがなければ続かないかもしれない、といいます。

ボランティア活動を始めようと思ったときに、グループに所属するということを考える人は多くないかもしれません。はじめは個人で活動を始める方が気楽に思えますが、一方で横のつながりはなかなか作れません。活動についての話を聞き合い、相談できる仲間がいるというのはとても心強いことなのかもしれません。とりわけ「傾聴」という、心の深い部分に入っていく作業は支え合う仲間の存在が重要であり、また、そこでも「傾聴」が活かされる、という強さがあるのではないでしょうか。

地域が良くなることは 自分に還ってくる

(丹下美幸さん 撮影:ライター)

「かたらい」での施設訪問活動、個人での見守り訪問、さらに権利擁護センターの生活支援員(地域福祉権利擁護事業)としての活動もしている丹下さんの現在の想いは、地域社会がより良くなっていくこと。自分が住む地域が良くなることは、人のためだけではない。互いに顔が見え、助け合えるようなまちに住むのは楽しいことだ、という丹下さんの言葉は、ボランティアの神髄を表しているように思えました。

「家にいる時間を仕事で埋めてしまうというのは、今の自分の状況とは合わない。ボランティアなら、ある程度自分の都合にも合わせて行うことができます。傾聴を始めるには講座の受講が必要ですし、きっかけは確かに気軽ではありません。でも、やってみればハードルはそれほど高くありませんでした。単発の講座や体験もあるので、そこからならさらに気軽に始められると思います」(丹下さん)


施設で一緒に歩くときも、相手の方の声にならない欲求を聴こうとしている、という丹下さん。先んじて「もっとゆっくり歩きましょう」ではなく、表情や様子を見ながら「もっとゆっくり歩きたい?」と声かけし、微かな「うん」という反応を見逃さない。たとえ言葉にならなくても、ただそばにいて時を過ごし、心を寄り添わせる。それもひとつの「傾聴」の在り方なのだといいます。このようにして、ただ聴いてもらう、ということを必要としている人は少なくないはずです。

丹下さんは傾聴を学ぶことで自分を知り、家族との関係もよくなったといいます。社会貢献のためのスキルは、特別な人にだけ役に立つものではありません。興味が向くものにアンテナを張り、思い切って始めてみると新しい発見があるのではないでしょうか。


この記事を書いた人

青葉まどか

仙台市出身。趣味は本、音楽、映画、という典型的インドア(元)少女。ライター。腰痛持ちだが、時々喫茶店で手伝いもする。「やるなら楽しく、真剣に」がモットー。

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