【輝け!キラリスト】m plus plus(株)CFO 中田眞城子さん【後篇】

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インタビュー

テクノロジーを使って、舞台やライブ、空間にあたらしい演出を提供するパフォーミングアートを実現する2013年設立のベンチャー企業、m plus plus(エムプラスプラス) 株式会社のCFO中田眞城子さん。今回の後篇では、眞城子さんがテクノロジーの世界に入り、m plus plus株式会社を起業して現在に至るまでのお話をお伺いしました。

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【輝け!キラリスト】m plus plus(株)CFO 中田眞城子さん【前篇】
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レボリューションを感じて

大阪で編集やライティングの仕事を続けている中で眞城子さんは「いずれ社会はペーパーレスになる」という話をよく聞くようになります。過去に「写植」という職業がなくなるのを目の当たりにしてきたこともあり、もっと未来について考えようと、コンピューターの専門家に話を聞くために週刊誌の人物紹介のページの取材を始めます。研究者や先生がたに話を聞くうちに、「コンピューター」とはそれまで自分が仕事で使ってきた用途のような「ワープロの延長線上にあるもの」ではなく、ICチップやセンサーとともにあるのが本質であり、それがさまざまな「モノ」に付くことで、生活全体をサポートするものになっていくということを具体的にイメージできるようになったそうです。

「当時はまだ携帯電話もなく、やっとショルダーホンが出てきた時代でした。でも、

研究を見せていただくうちに、こうしたコンピューターの技術と通信ネットワークで社会全体のインフラが変わっていくことを実感しました。それは、エレキギターやシンセサイザーの登場で音楽が変化し、テレビゲームの登場によってゲームが変化した以上のレボリューションになると思いました」

そういう時代になるなら、そういうジャンルのことをもっと知りたいと、眞城子さんは技術系のさまざまな学会や研究会に顔を出すようにななります。そこではさまざまな興味深い研究が行われていましたが、それぞれの研究には「新規性」が求められるために、内容が先へ先へと進み、どんな研究がされているのかは一般社会で認知されていないという現状がありました。大学で行われている研究内容をもっと世間に紹介したい、と思った眞城子さんは、産学連携のお手伝いをするようになります。

若い才能との出会い

「だんだん日本の景気が悪くなってきて、大学でも予算の確保がたいへんになってきた時代でした。サポートしていた伸び盛りの学生さんの中に現在m plus plus(株)の社長である藤本がいたのです」

海外にも積極的に出ていき、自分で研究の予算を取ってくるなど、ハングリー精神旺盛だった藤本さんは、研究テーマであるウェアラブルコンピューターの無線通信で衣服に装着したLEDを制御する作品を制作。デジタルアートの世界で最も権威があると言われている、オーストラリアのリンツで開催される芸術・先端・文化の祭典「アルス・エレクトロニカ」で招待展示したこともあり、国際的な学術の発表だけでなくCMなどの仕事も入ってくるようになりました。

そしてある日、藤本さんのところにEXILEのHIROさんから引退公演の衣装を作って欲しいという依頼が舞い込みます。納期はわずか1ヶ月弱。死ぬ思いで開発と製作を行います。ちょうど博士号を取得し、東京の大学で教職に就いていたため、研究会などを開催していた眞城子さんのオフィスで衣装の製作の追い込みをして、はじめてのドームツアーに間に合わすことができました。

ツアーは20公演以上ありました。藤本さんは週末はツアーに帯同し、また平日は東京に戻って教鞭をとる、という状態が続くことになり、眞城子さんはまさに縁の下の力持ちとしてサポートに明け暮れます。

その直後、今度はカリフォルニアに本社のあるエンターテイメント企業から、香港にあるテーマパークの10周年の記念パレードの仕事のオファーが来ます。さらにEXILE HIROさんからも評価してもらい、次の三代目J soul Brothersの公演の仕事も進めることになりました。二足のわらじでできる限界をはるかに超え、起業することを決めます。藤本さん29歳、眞城子さんは大阪から藤本さんのいる東京に引っ越すことを決めます。

女にとってチャンスとは

「すでに55歳、普通の会社員なら定年退職するような年齢です。『よくその年で』と言われることもあります。大阪には自分の会社もあったし、バーも経営していました。仕事だけでなく、地域との関わりやしがらみもたくさんありました。でも、私は無謀な選択だとは思いません。会社を作った年の4月にはちょうど下の子どもが大学で修士に進んでいて、親の役目はひとまず終了と思っていました。離婚しているので、夫をサポートする必要もありません。父もすでに亡くなっていました。足の具合が少し悪かった母は連れてきたのですが、今は調子も良くなっていますし、身軽といえば身軽な時期だったのです」

眞城子さんは言います。

「家庭のある女性には、自由はそうありません。とりわけ、あまり問題のない順調そうな家庭にいればいるほど、ある意味自分を存分に発揮するという意味で、自由になるチャンスはないと思います。私は決して平坦とは言えない人生を送ってはきましたが、困難に直面することで自由に行動できるチャンスも巡ってきました。特に今回の起業のように子育ても一段落し、私が急に死んだとしても子どもが路頭に迷わない状態になったタイミングで、将来有望な若者に、会社をやるから手伝って欲しいと言われる……人生で、タイミングよくそんなチャンスが巡ってくることはなかなかありません」

人生の岐路に立った時に、いつも常に派手な冒険のある方を、アクションを起こす方を選んできていることは自覚しています、と言う眞城子さん。

「それが成功か失敗かはわからないけれど、おかげで変化に富んだ人生は送れているなあと思います。『平凡な人生こそが幸せ』という言葉をよく聞きますが、その『幸せ』のためにガマンしていることもたくさんあると私は思います。能力のある女性が結婚した途端に家庭に入り、それまでのキャリアもスキルも捨てて、おじいちゃんの昼ごはんを作るために何かを切り上げて家に帰る、というような女性を、いままで大勢見てきました。そういう様子を見るにつけ、『幸せ』という呪縛で自分を押し殺しているんじゃないかと思わずにいられなかった。それなら、幸せかどうかはわからないけど、私は平凡に安定した人生より、やりたいことに挑戦していく人生を送りたい」

会社を作ってから3ヶ月、眞城子さんは母親を近くのワンルームに住まわせて、自分は会社の奥の部屋で寝泊まりをしていたそうです。このまま行けば、会社は大丈夫そうだとわかってから、会社の近くで同居することにしました。

挑戦は続く!

「すでに就職していた上の子どもも、大学院だった下の子どもも、結局東京に出てきました。それぞれ違う会社に就職して、今はなぜかまた家族4人が一緒に住むことになってしまいました(笑)。m plus plus(株)は創業して丸4年が経ち、この8月で5年目を迎えます。うちの技術はどんなことにも応用できるものですが、この4年は衣装関連を中心にやってきて、衣装に関しては極めたという自負がありますから、これからはまた新しいことに挑戦していこうと、すでに準備を始めている段階です」

創業から4年でスタッフも増え、音楽や映像分野でのプロフェッショナルも加わったm plus plus(株)は、これからも困難な挑戦にトライし続けて、人々をあっと驚かすようなものを見せてくれるに違いありません。その最先端の現場で、今年還暦を迎える眞城子さんは、これからも輝くキラリストです。

m plus plus(株)がシステム開発・光の演出を手がけるSAMURIZEのパフォーマンスは、9月3日まで東京ドームシティGallery AaMoで開催されている「TOKYO ART CITY」のイベントでご覧になることができます。

TOKYO ART CITY
http://tokyoartcity.tokyo/td2017/#access

この記事を書いた人

吉田メグミ

フリーライター。1970年東京生まれ。

デジタルからカルチャー、エンタテインメントなどの雑誌、書籍、WEB記事を書いています。フリーペーパーココカラ編集員。

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