41歳からの学びと実践で新たな人生へ。心理カウンセラー・小野寺美和さん

カテゴリ名:
インタビュー

40代・50代を迎えて、「新たなことを学びたい」「それを活かして第二の人生に踏み出したい」と考える方は多いでしょう。しかし、あれこれ言い訳を考えて踏み出せない人もいると思います。実際に行動に移した人は、どのように決断しているのでしょうか?

現在心理カウンセラーとしてワークショップや個別カウンセリングを行っている小野寺美和さんが、22年間の会社員生活に終止符を打ってカウンセリングについて学び始めたのは2012年。きっかけは、2011年に東日本大震災で地元の宮城県気仙沼市が被災したことでした。

体験談から伝わるのは、「学び」と「実践」が次々に「出会い」を呼び込むということ。これから新しいことを始めたい方にも役立つヒントがいっぱいです。

小野寺さんがコミュニティ・カウンセラーとしてワークショップ「ほめラボ」を開催している、地域活動の拠点「ご近所ラボ新橋」で話をうかがいました。

Profile

小野寺美和(おのでら・みわ)

「ほめ上手を増やして社会を良くする」を活動理念として、2013年秋から、「ほめ方・ほめられ方」講座やワークショップを全国で開催。参加人数は、2017年5月現在で800名以上。ほめる達人検定1級・認定講師。産業カウンセラー、ワークショップデザイナー、コミュニティ・カウンセラー。2017年5月、実績をかわれて、一般社団法人 日本支援助言士協会の理事に就任。1969年生まれ。宮城県出身。

「ほめ達!カウンセラー・デラコ」ブログ http://happylifelabo.net/

〝ギブ&テイク〟の会社人生から、〝与える・還元する〟社会活動へ

外資系企業に勤める多忙な会社人間だった小野寺さんが、社会活動としてカウンセリングを考えはじめたきっかけは、2011年の東日本大震災でした。

宮城県に住むご両親が被災し、地元の同級生の協力を得て安否が確認できたのは、一週間後のことだったといいます。そののち、仙台在住のお兄さんが避難所に救出に行き、ご両親は上京して都内で避難生活を送ることになりました。

「このとき、たくさんの人の支援を受けたことで、自分が受けた恩を東北のために『還元したい』『恩返ししたい』という気持ちになりました。震災のときに、見返りを気にせず与え続ける大勢の人に会ったことにも、大きな影響を受けました」

その年の12月に、勤めていた会社でリストラがあり、小野寺さんは次のキャリアを考える機会に直面しました。心のケアの仕事に興味を持ったのはこのときです。

「振り返ると私自身、仕事のストレスからパニック障害の一歩手前になったこともありましたし、同僚の自殺もありました。だから、職場のメンタルヘルスには問題意識をもっていたのです」

退職した小野寺さんは、退職金を軍資金として、ビジネススクール「アイムパーソナルカレッジ」カウンセラーコースを受講。

翌年、産業カウンセラーの資格を取得して、さらにメンター講座受講、価値を発見するほめる達人=「ほめ達」検定の3級・2級・1級取得、青学ワークショップデザイナー育成プログラム受講、コミュニティ・カウンセラー資格取得と、ぐいぐいと学びを広げ、深めていきました。

小野寺さんは、匿名電話カウンセリング「ボイスマルシェ(https://www.voicemarche.jp/)」の専門カウンセラーを務めている

学びの入り口のドアを叩くのに、年齢の縛りはない

カウンセリングを学び始めた小野寺さんが驚いたのは、この世界で学び、活動する女性たちの年齢層が高いことでした。

「60歳で学びはじめて、70歳でカウンセラーになった方や、80歳で現役の方がいらっしゃる世界なんです。『独身の私が、会社を辞めて、これからどう生きていこうか』と考えていたのですが、年齢は行動しない理由にならないと、本当に思いました。40代で年齢を気にしたら、叱られちゃいます(笑)」

活躍する年上世代のお手本が大勢いるのを見て、小野寺さんは、「自分を育てる時間軸が変わった」そうです。

「70代現役カウンセラーになろうと思ったら、40代で学び始めても、まだ30年ほど時間があります。そう考えると、あせらずに済みましたね」

小野寺さんがワークショップ「ほめラボ」を開催している「ご近所ラボ新橋」は、学びの場「ご近所イノベーション学校」との出会いの場でもある

資格よりも志。ボランティアでまず始めてみる

「私の活動の原点は、これです」と小野寺さんがバッグから取り出したのは、「ほめ言葉のシャワー」と書かれた、手のひらサイズの小さな冊子でした。

心が元気になるほめ言葉がちりばめられた、眺めているだけで癒される冊子。カウンセリングを学びはじめた頃、仲間に紹介されて手にしました。石川県で大人のたまり場「紅茶の時間」を主宰する水野スウさんが作成したものです。

同じ頃小野寺さんは、調布市のレストラン「クッキングハウス」で、ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)のワークショップを体験しました。ソーシャル・スキル・トレーニングとは、対人行動を習得する練習のことで、主に発達障害のある方向けに行われます。ワークショップとは、一方通行の情報や技術の伝達ではなく、参加者も参加して学びあう体験型講座のことです。

そこでは心に悩みを抱えた人が、グループでの対話を通じて自分の心を開いていき、最後には笑顔になっていました。

「人は無意識にマイナス面をみる習性があります。それは危機察知の本能です。でもマイナス面ばかり見続けていると、心が苦しくなってしまう。今できていることを認め、ほめられて『それでいいんだよ』と受けて止めてもらうことで、人は安心し、自分を否定することをやめて、自信を取り戻せるのです」

このワークショップは、一般の方にも役にたつはず……と、小野寺さんは考えました。「ほめ達」検定を取得した「ほめる達人」として、ほめることの効能を広めたいとも考えていました。

そんな折、サポートグループ「人の輪ネット」から声をかけられたことで、都内の避難者を対象に「心と身体を元気にする、ほめ言葉のワークショップ」を行う機会を得ました。そしてこれがきっかけで被災地のボランティアに志願し、医療系ボランティア団体「キャンナス東北」のサポーターとして、石巻を訪問することになりました。

「『カウンセラーの勉強中で、資格はまだ持っていないのですが』と伝えたら、『志があれば、来ていただいて大丈夫ですよ』と返事をもらったんです」

石巻や気仙沼の仮設住宅の集会場で行った「心と身体を元気にする、ほめ言葉のワークショップ」は大好評。小野寺さんにとっても大きな経験となりました。

ボランティアから実績を積み重ねた小野寺さんは、現在、講師として各地に招かれるまでになりました。最初から仕事にしようと考えなかったことが、信頼を得て、仕事にもつながるという成果になったのです。

擦り切れて手になじんだ冊子「ほめ言葉のシャワー」

学んだら教える、が当たり前。実践は何よりの学習

少し学んだら、自分でも人に教えてみることは、学びが身につく何よりの方法といわれます。とはいえ、自信のないときにこれをやるのには、勇気がいるかもしれません。

小野寺さんは会社員時代に、パソコンのインストラクターをやっていたため、「習ったら先ず実践し、実践して役に立ったことを人に伝える」ことに慣れていました。

「そうしないとすぐに忘れて、せっかく学んだ知識が、錆びついてしまう気がするものですから」

また、教える仕事が長かったために、教えたことが思うように伝わらないこともたくさん経験しました。「教える」行為につきもののプレッシャーやハードルがあることを元々知っているので、「失敗を恐れる気持ちは比較的少ない方かもしれない」といいます。

また、仕事で業務の一環として、顧客の評価を受ける立場にも慣れていました。

「会社員時代の職場は、常に自分を評価されるのが当たり前の世界。お客様によってはクレームもありました。そう考えると、悪い評価もときにはあると腹をくくれたので、かなり鍛えられました」

自分を試すように、機会を逃さず教える立場に立った小野寺さん。最初に体験しに来てくれたのは、カウンセリングやワークショップデザインなどの講座で共に学んだ同期の仲間たちでした。

「学びの下地が一緒だと、つながりの結び目が強くなるんですね。SNSでシェアしてもらえる情報も貴重だし、ワークショップでもらえる感想や反応にも愛があるんです」

貴重な出会いがあるのもまた、「学び」と「実践」の効能といえそうです。

仲間と対話しながら、ほめる事の楽しさを学び、実践する場「ほめトレワークショップ応用編 欠点を魅力に変える!」を開催(2014年8月23日・中目黒にて 写真/小野寺さん提供)

好奇心のままに、やりたいことはいつからでも始めよう

話を聞いていてもとてもエネルギッシュな小野寺さん。「いろいろやってきて、これまで不安に思ったことはないんですか?」と聞くと、「ありまくりですよ!」と言い切ります。

「私はこれまで悩みながらも、目の前のご縁を大切にして歩んできました。振り返ると点と点がつながり、道が出来ていた感覚です」

会社員からカウンセラーに転身した小野寺さんは、途中、介護、代議士秘書と3足のわらじをはく生活も経験しました。「定時の勤務をしながら同時に別の活動を行うパラレルキャリアは、エネルギーの使い方が重要」と考え、現在はカウンセラーと講師業に絞って活動しているそうです。

「私にとって、思い切って退職してからカウンセリングの道に進んだことは正解だったと考えています。忙しい時期はひまになることを恐れがちですが、私は『ひまを恐れるな』といいたいですね。想像力は心と身体のゆとりが育む。次の行動のために思い切って何かを『やらない決断』が、生産性を上げる。それによって、新しいものが自分の人生に芽生えてくるのを感じます」

ほめ達カウンセラー・デラコとして「『愛と勇気と覚悟』でほめる」を全国で指導している小野寺さんは、年女の47歳。ほめ達認定講師の体現者として、先日生まれて初めて自分から告白して、信頼できるパートナーを獲得、両親にも紹介したそうです。

これから新しいことを始めたい同年代の方に、伝えたいことを聞きました。

「『新たなことに挑戦すると、いくつになっても道は拓ける』ということですね。元気なうちに好奇心のままに、行きたいところに行く。会いたい人に会いに行く。やりたいことはどんどんやってみるといいのではと思います」

「ご近所ラボ新橋」近くの憩いのスポット、鹽竈神社(塩釜神社)にて

とてもパワフルな小野寺さんの行動は、迷いながらも一歩踏み出す勇気から始まった「学び」と「実践」の積み重ねでした。

始めること、そして続けることが、数年の間に大きな差を作り出します。あなたの「興味がある」「始めたい」という気持ちは、「今がチャンス!」というシグナルかもしれません。

(写真/宮野真有 撮影)

この記事を書いた人

宮野真有

グリーンフォトライター/文章アドバイザー

「植物」×「写真」×「文章」で、毎日を穏やかに楽しく充実させるための方法を研究、発信中。また、フリーランスの雑誌ライターとしての20年以上の仕事歴を活かし、文章が苦手な人などに、自分史やブログの書き方の指導・アドバイスを行っている。

自分史活用アドバイザー、グリーンセイバー

ブログ:http://miya-mayu.com/

tabitokushuに関してのおすすめ記事

tabitokushu ー 記事一覧

最新記事一覧