子どもの心を育てるクッキングクラス主宰・鈴木真理さん

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インタビュー

JR松戸駅から徒歩数分のカフェ『ラブリング』。ここで開催されるキッズ向けクッキングクラス『まじかるれっすん』にお邪魔してきました。主催するのは、家庭料理教室イージーキッチン主宰の鈴木真理さん。15年ほど前から大人向けの料理教室『マジカルクッキング』を開催していましたが、2012年から、「心身共に健康な子ども達を増やしたい」という思いで、キッズ向けの講座『まじかるれっすん』を開催しています。

きかっけは長男の療養。おいしいレシピが評判に

鈴木さんは、1957年生まれ。音大出身でピアノ講師をしていた鈴木さんは、最初のお子さんである息子さんが2歳のときに小児がんと診断され、「余命半年」を宣告されたそうです。鈴木さんは、「体に良い食事で、なんとか元気になって欲しい」と、おいしく楽しく食べられる自然食を試行錯誤。息子さんは、6歳で亡くなってしまいましたが、「長男の病気が今の活動の原点」と言います。

鈴木さんが考案した簡単でおいしい野菜中心のレシピは、周りの友人たちに好評で、頼まれて教えるうちに口コミで大人気に。ちょうどその頃、カフェ『ラブリング』のオーナーと知り合い、大人向けの見学型料理教室『マジカルクッキング』を始めます。一般的なレシピとは違う点は、行程をぎりぎりまで省き、しかもおいしいという点。『マジカルクッキング』の由来は、ユニークでおいしいレシピと調理法に生徒さんが、「マジックみたい!」と驚いたから。

あるとき、親子クッキング講座を開催したところ、子ども達がとても楽しそうにしてくれたことから、2012年よりキッズ向け『まじかるれっすん』が始まったそうです。

「子どもは飽きるだろうから、2年間24レシピで終了したらちょうどいいかなと思っていたのですが、2年間のレッスンを終了した子ども達から『もっと続けたい』という声があがり、アドバンスクラスも作りました」と鈴木さん。現在は、小学校一年生から中学生まで、50人ほどの生徒が登録してます。

『まじかるれっすん』のこだわりは、子ども一人で再現できるレシピ

『まじかるれっすん』のこだわりは、「家庭で、子ども一人で再現できる」こと。そのため、レッスンでは、一人ひとりにお鍋と食材が用意され、子ども達は自分の料理に責任をもち、最後まで一人で完成させます。

また、「子どもでも失敗しないように、レシピは極力簡単になるよう工夫していますが、おいしさも妥協しません」と鈴木さん。「お母さんが作るよりおいしいレシピにこだわっています。子どもが作ったからと、口先だけで『おいしいね』と言っても、子どもには伝わります。お父さんやお母さんが一口食べて、心の底から『おいしい!』と言ってしまうレシピにしています」。

さらに、子ども達の印象に残るように、すべてのレシピの中に、「驚き」、「発見」、「ワクワク」の3つが入っていることも鈴木さんのレシピの特徴です。

簡単でおいしい「親子丼」のレッスンに潜入!

『まじかるれっすん』がマジカルであることを確認するために、見学させてもらいました。

この日のレシピは親子丼。最初に、具材の扱い方について、「人参はこんな風に切ってね。この切り方は何て言う?」「タマゴはどうやって割るのが正解でしょう?」などと、デモンストレーションをしながら丁寧に説明していきます。

続いて、調理の仕方。「中火ってどのくらいかな?」「どうして蒸気がたまるのかな?」など、常に子ども達に問いかけ、子ども達から答えが出てくるのを待ち、たっぷりとコミュニケーションを取りながら進めていく鈴木さんの姿が印象的です。子ども達も鈴木さんの話に引き付けられ、目がキラキラしています。鈴木さんが説明しながら一皿完成させると、子ども達はそれぞれのテーブルに戻ります。

みんな、しっかりと包丁を握って具材を切っていきます。包丁を持って移動するときは「包丁通りまーす」と声をかけるなど、安全のためのマナーもばっちり。調味料を計る目つきも真剣。

見学している保護者からは、「子どものこんなに真剣な顔は初めて見た」という感想も少なくないそうです。具材に卵を流し込み、蓋をして蒸らしたら、いよいよ完成。

最後は、自分用と、お父さん・お母さん用に盛り付け。盛り付けにも個性が出ます。

お父さん・お母さんの前にお皿を運ぶときの、照れたような誇らしいような表情が印象的。お父さん・お母さんも嬉しそう。レッスン開始から約90分。親子で向き合って、ご飯をいただきます。

『まじかるれっすん』で、親も子もハッピーに

そうえい君(8)は、前回、体験レッスンをして、その場で「やりたい!」とお母さんに伝え、今回が2回目。前回習ったお好み焼きは、家でお姉ちゃんに教えながら二人で再現。いつもは野菜を食べないお姉ちゃんも、自分たちで作ったお好み焼きは食べることができた、という嬉しい波及効果もあったそうです。

りくと君(9)は、大手クッキングスクールのキッズクラスを経験して、『まじかるれっすん』に移ってきたそうですが、お父さんは、「鈴木先生は、子どもの自主性を尊重しながらもきめ細かい指導をしてくれるので良いですね」と満足そうです。

ゆいと君(6)が作った親子丼を嬉しそうに食べたお父さんは、「お腹がすいたら自分でご飯を作って食べることができる子、強く生きていける子になって欲しい」。

1年前から通っているこうすけ君(10)は、ハヤシライスや豚汁など、好きなレシピは何度も作っているそうです。お母さんが疲れて昼寝をしている間に、一人でハヤシライスを作ってお母さんを感動させたこともあるそうで、「今日の親子丼も余裕だった」と頼もしいコメント。

『まじかるれっすん』で子ども達のモチベーションのひとつになっているのが、レシピを家で再現し、感想を書き、保護者のコメントをもらい、それが4つ溜まったらコック帽にバッジをつけてもらえること。この日、3つ目のバッジをもらったのは、ひなたちゃん(7)。ひなたちゃんのお母さんは、「ひなたのご飯を一番喜んで食べているのはパパ。毎回、大絶賛しています」と笑います。

『まじかるれっすん』の本当のねらいは、子どもの心を育てること

「人のために何かを作る喜びを知ることで、気持ちが満たされるのでしょうね。ここに来る子ども達は、人を思いやる心が育っています。不登校だった子が、自信をつけ、学校に行けるようになった例もあります。子ども達にクッキングを教えるのは、将来シェフになって欲しいからではありません。クッキングを通して、小さな成功体験を重ねることで、あきらめない、がんばれる子になれると信じています」と鈴木先生。

実は、鈴木さんは2007年にパーキンソン病と診断され、薬を使いながら生活されています。「長男の療養中は多くの方に励まされました。残念ながら他界してしまいましたが、今こうして子ども達にお料理を教えることは、恩返しの機会をもらっていると思っています。『まじかるれっすん』を全国に広めて、子ども達がたくましく将来を切り拓いていく手助けをしたい」と鈴木さん。

鈴木さんから、すべてのお父さん・お母さんへのメッセージをいただきました。「私は長男の病気がわかってから看取るまで、なんとかおいしく楽しく、カラダに良いものを食べてもらおうと試行錯誤しました。その過程で、家族で食事ができる幸せ、楽しく食べることの大切さを実感しました。子どもの成長は本当に速く、家族がそろって食事ができる期間は、とても短いものです。このかけがえのない時間を大切に、食事中は親子で会話をしながら、とにかく楽しく食べてください」。

『まじかるれっすん』を広めてくれる講師(魔法使い)も募集中!

鈴木さんは2016年に、『まじかるれっすん』の講師(魔法使い)養成講座をスタートしました。

養成講座の1期生で、現在研修中の伊藤恵美子さんは、20歳前後の二人のお子さんのお母さん。「小さな子ども達に教えるのは難しいですが、発見と感動だらけ。小さい子が愛おしくてたまらない」と話してくれました。

同じく養成講座1期性の内藤吏香子さんは、現在13歳の息子さんが5年前から『まじかるれっすん』に通っていたことから、ご自分も大人向け講座に通い始めたそうです。「子ども達の存在そのものを受け止める鈴木先生の姿からは学ぶことが多い」と言います。

鈴木さんは、「私の体が元気なうちに、講師(魔法使い)を養成し、未来ある子ども達の心と体を元気にしたい」と熱い思いを語ってくれました。「子ども達の心を育てる」という理念に共感し、レシピと講座内容を広めてくれる講師(魔法使い)候補生を、まだまだ大募集中です。

この記事を書いた人

鯰 美紀(なまず みき)

兵庫県芦屋市出身、渋谷区在住。関西学院大学卒業後、関西経済連合会・国際部にて5年間勤務。結婚退職後、アメリカ、中国での生活を経て、日本帰国後にライターとして活動を開始。各種業界の社内報、専門誌、書籍、webなどで幅広く執筆中。

インタビュー実績は、企業役員をはじめ、メダリスト、大使館員など。さりげなく言葉を引き出すインタビューが好評。TOEIC920点。
http://namazumiki.com/

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