歴史×化学で料理をおいしくする!~調味料検定の合格者に聞く

カテゴリ名:
心の豊かさ

前回の「パンシェルジュ検定」に続き、今回取り上げるのは「調味料検定」です。

「調味料の文化や歴史、料理の腕がグンと上がる使いこなし方など、調味料の魅力をあますことなく学べる検定」(公式ホームページ(※)より)ということですが、調味料についての問題って、いったいどんなものがあるのでしょうか?どういった方が受検するのかも、気になります。ということで、合格者の方にお話しを聞きました。

https://www.kentei-uketsuke.com/chomiryo/about/

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現在1歳のお子さんを育てるお母さんでもある、小野早代子さん。調味料検定の受検前後に妊娠がわかったということで、試験当日はつわりの影響もあり体調は万全ではありませんでした。しかし、同日に行われた初級、名人試験いずれにも見事合格。その後も、家庭科料理技能検定を取得、東海道川崎宿三角おむすびコンテストで観光協会会長賞を受賞するなど、活躍の幅を広げていきました。

小野さんが料理関係の資格を取ろうと思ったきっかけは、意外にも音楽。アフリカの太鼓「ジャンべ」のリズムで表現するアーティスト集団「宝道」(※)のメンバーとして、子どもたちへの演奏をする機会を得た小野さんは、教える楽しさを知ることになります。そのうち、もともと得意な「料理」も、いつか教えられるようになりたいと考えるようになり、料理に関する資格を探し始めたのだといいます。

公式テキスト。 中は勉強の跡がびっしり

「“第一回目”というのにも魅かれて」と笑う、小野さん。過去問がなく、どこが出るのかわからないため、「とにかくテキスト丸々覚えるしかなかった」のだとか。ご持参いただいたテキストは、確かに線で真っ赤になっていました。

※「宝道」ホームページ http://www.takara-do.net/

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岡田三恵子さんはフードコーディネーターの資格を活かし、すでに雑誌「サンキュ!」で料理や日々のことについて発信する、“トップブロガー”。

岡田さんが担当したレシピが掲載されたページ

以前、海外の食材や調味料を集めたチェーン店とのコラボ企画の中で、レシピを考案したこともある岡田さん。調味料検定のことは、近所のスーパーに貼ってあったチラシで知ったのだといいます。「元々好きな分野だったので、受けてみることにしたんです」。岡田さんも、初級、名人ともに合格し、その知識を料理に活かしています。

岡田さんのブログ https://39.benesse.ne.jp/blog/1608/

甘酒の季語は、夏!? 知っているようで知らない調味料のこと

お二人に難しかったところを尋ねると、揃って「醤油が大変で……!」との答えが返ってきました。醤油は製造工程や種類、産地などが細かく多岐にわたり、さらにそれぞれに合った使い方や食材などが分かれてくるため、覚えるのは並大抵のことではなかったようです。

また、アルコールが苦手な岡田さんは、やはり酒類に関する部分がピンとこず、苦労したとも。小野さんは、人名を答える問題にも手こずったといいます。

「うま味成分を世界で最初に見つけ、うま味の名付け親となったのは誰かという問題がありました。正解の池田菊苗のことは、たまたま地元が味の素の創業地に近く、知っていましたが、他にもこうした問題が出ていました。一方で、成分に関する問題も多く、(調味料検定の勉強は)歴史と化学だな、と思いました」(小野さん)

「誰が成分を発見したとか、どこで生まれた、といった歴史的な部分と、イノシン酸やグルタミン酸といったうま味成分と食材の持つ成分との掛け合わせで味を引き出すという、化学式のような部分。両方を勉強しました」(岡田さん)

化学式のような「旨味の相乗効果」を知ったことで、例えば味噌汁を作るときにもこれまでとは違った味噌と食材の相性を知ったのだそうです。例えば、グルタミン酸を含む昆布出汁に、コハク酸を含む帆立を合わせると、旨味が引き立ってとてもおいしいのだとか。味噌汁に帆立なんて想像したこともありませんでしたが、こうしてお話を聞いていると挑戦してみたくなってきます。

考えすぎて、かえって曲解してしまうこともあったというお話も。

「『甘酒は江戸時代には、どの季節によく飲まれていたか?』といった問題があったのですが、飲む点滴ともいうけれど、それでは当たり前すぎる? と考えすぎて、間違ってしまいました。甘酒は夏の季語で、江戸時代にはまさに栄養剤として、夏に飲まれていたんです」(小野さん)

甘酒といえば温めて冬に飲むものという印象が強く、「飲む点滴」といって夏に飲むのは最近のブームなのかと思っていましたが、夏の季語とは驚きです。

お二人から出てくる言葉にはひとつひとつに裏付けがあり、学んだ知識がしっかりと定着していることが感じられました。

お二人のイチオシ調味料

おススメの調味料をお二人に伺ってみました。

岡田さんのおススメは、ヒゲタ醤油の「本膳(※)と、本枯節。「本膳」は、JAS規格で特級の醤油。醤油は麹を入れることでうま味成分であるアミノ酸などが生成されますが、そのアミノ酸の中にあるのが、窒素成分。この窒素成分の含有率が高い醤油が特級に選ばれるのだそうです。「『本膳』は濃くて旨味がとても強いので、そのままで味わってもおいしい。刺身に抜群にあいますよ」

本枯節は、表面にカビの生えたかつお節。この存在を岡田さんは調味料検定で知ったのだそうですが、「食べてみたら驚くほどおいしくて。ご飯にかけて、醤油を落として食べるだけで、特別なごはんになります」

醤油に、かつお節。どちらも家にある普段使いの調味料ですが、こだわれば奥深い世界があることを知りました。

http://www.higeta.co.jp/topics/150708.html

小野さんのおススメは、かんずり社の「かんずり」と合同会社しょさんべつ美醂屋の「のんでみりん」。

「かんずり」は、唐辛子を雪にさらしてアクを除き、柚子と麹、塩と共に3年間熟成、発酵させた調味料(参照 かんずりオフィシャルサイト(※1))。スキーで妙高高原を訪れた際にお土産に買い求めたのが最初の出会いだったのだそうですが、家族で鍋の薬味として食べたところ、第一印象は食べなれない味に驚いたのだとか。それがやがて「病みつき!」に変わり、それ以来のファンなのだといいます。小野さんのおススメの食べ方は、すき焼きの卵に溶くこと。小野家のすき焼きには欠かせないのだそうです。「味噌汁に入れてもおいしいし、和風のパスタに加えてもワンランク上の味に変わりますよ」

もう一つは、「のんでみりん」。(現在は「星の雫」として販売 ※2)。生のままロックで飲んでもおいしいというから驚きますが、そもそも江戸時代まではみりんは飲み物だったというので、さらに驚いてしまいました。小野さんは北海道でこの商品と出会い、以来、大切に味わっているのだそうです。「のんでみりん」は、みたらしのタレのような香ばしく優しい甘さがあり、アイスにかけるのもおススメなのだとか。クッキーやパウンドケーキの隠し味にも使っているとのこと。

「かんずり」も「のんでみりん」も、持つことで普段の食卓に新しい味わいを加えることが出来そうです。

※1http://kanzuri.com/

※2http://www.vill.shosanbetsu.lg.jp/tokusanhin/mirin.html

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今後について尋ねると、岡田さんは「ブログやレシピの中でも、調味料の知識を活かしたアドバイスができればいいな、と思っています」とのこと。

小野さんは、「親子で音楽やリズムを楽しむ時間を作りながら、幼児食をアドバイスしたり、子ども参加型の料理教室を開いたりしてみたい」と、夢が膨らんでいます。

お二人とも、働きながら子育てをしつつ、食べる楽しみを暮らしに、仕事に、役立てていくという前向きなパワーに満ちていました。お二人はこの日が初対面だったのですが、調味料の話になると「そう!大変だった!」、「そんな問題、あった!」と、和気あいあい。ライターは知らないことだらけでしたが、身近な調味料を深く知ると、より料理がおいしく楽しくなることがわかり、お二人の知識がうらやましくなりました。

左:岡田三恵子さん 右:小野早代子さん

この記事を書いた人

青葉まどか

仙台市出身。趣味は本、音楽、映画、という典型的インドア(元)少女。ライター。腰痛持ちだが、時々喫茶店で手伝いもする。「やるなら楽しく、真剣に」がモットー。

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