国宝展に行けなかったあなたへ 全国の「国宝」を見に行こう!

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心の豊かさ

昨年11月に閉展した、京都国立博物館の「国宝展」。60万人の拝観者が訪れ、国宝への関心の高さが感じられました。「行きたかったけれど、終わっちゃったなあ!」、「遠くて行けないわよ」。そんな呟きを漏らしたあなた。国宝は、日本全国津々浦々に点在しているのです。これを機に、種類も所在もバリエーション豊かな国宝の中から、あなたの「お気に入り」を見つけてみませんか?

国宝って、そもそも何?

国宝とは、国が指定した重要文化財の中でも世界文化の見地から価値がある、「たぐいない国民の宝たるもの」と規定されているもので、建造物絵画彫刻工芸品書跡典籍古文書考古資料および歴史資料がその対象となっています※1。文化庁の発表によると、2018年12月1日現在、国宝の数は1110件。重要文化財(重文)が1万3166件ですから、重要文化財のうちの1割弱、という比率になります。※2 それだけ、国宝というのは貴重なものだということがわかります。
日本における「国宝」という概念を考え出したのは、明治時代に”お雇い外国人”として日本美術を外からの目で再評価した、アーネスト・フェノロサ。彼の考えをもとに、明治30年(1897年)、古社寺保存法が制定された際、正式に「国宝」ということばが初めて使用されました。昨年はそれからちょうど120周年ということで、国宝展をはじめ、国宝にまつわる多くの企画が立ち上げられました。

「国宝」とは貴重で素晴らしいもの、ということはわかっているものの、ジャンルも形態も多岐にわたるため、全体としてとらえるのはなかなか大変です。これを機に、様々な「国宝」を見てみるというのは、いかがでしょうか。

※1 参考ː https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AE%9D

※2 参考ː http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/shitei.html

守られてきた宝 偶然見つかった宝 

国の宝をめぐるエピソードは枚挙にいとまがありません。

興福寺の十大弟子立像は、1300年の歴史の中で少なくとも四度の火災に合っています。しかし、その度に救い出されたのか、たまたま逃れたのか、10体のうち6体が生き残ってきました。

延暦寺にあった「阿弥陀聖衆来迎図」は、信長の焼き討ちですべてが焼き払われる中、必死の思いで救い出され、高野山に移されたということが、図の裏書から判明しています。

古くから権力によって守られ、あるいは民衆から愛されてきた貴重な宝。それを守りたいという想いの底には、作品を愛するという気持ち以上の、崇拝や畏れなど様々な感情があったことがわかります。長い年月をかけて、「宝を守る」という心を抱かせてきたという事実そのものが、宝を宝たらしめているようにも見えてきます。

一方で、長い間人の目に触れることなく、偶然に現れて「宝だ!」と気づかれたものもあります。漢の光武帝から倭奴国王に送られたという金印は、田の溝を修理中にたまたま発見されました。また、「縄文のビーナス」と呼ばれる土偶も、長野県の棚畑遺跡の発掘調査によって幸いにも完全な形で見つかり、国宝に指定されました。

技術の高さ、造形の美しさ、貴重さ、誕生にまつわる経緯の歴史的重要性……などなど、国宝が「宝」とされる基準は素人目には実に様々であるように映ります。それらが同一に「国宝」として並ぶというのは、一種不思議な印象もありますが、そのバラエティの豊かさこそが、国宝を見るおもしろさかもしれません。

全国に散らばる国宝を一覧する

国宝に興味が向いてきたら、さっそく見に出かけましょう。家の近くの国宝は何か、どこにあるのかを知りたいとき、また、旅先で国宝を見てみたいときには、文化庁のデータベースを利用すると一目瞭然です。

「地図から検索する」を使えば、自分がいる場所の近くにある国宝を見つけることができます。もっとも地名で検索すると、国宝のみならず重要文化財や天然記念物なども一緒に表示されてしまいます。さらに国宝はとてもレアでめったに現れないので、「国宝を探すぞ!」という気分からは遠ざかってくるかもしれません。が、国宝探しをきっかけに重要文化財に出会い、名勝に出かけるというのも決して悪いものではないはずです。

それでも国宝にこだわる場合は、「文化財分類ごとに見る」で国宝を探すこともできます。この場合、建造物なのか、美術品なのかは別項目になっているので、目的を絞ることがおススメです。解説が一言だったり、画像がないものも多いので、どういうものかをよく知るためには、めぼしいものを見つけたら別資料でさらに詳しく調べることで、より楽しめるでしょう。とはいえ、「とりあえず見に行ってみる」という出会いにも、思いがけない良さがあるかもしれません。

※ 国指定文化財等データベース(文化庁)

http://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/index_pc.html

国宝に詳しくなったら

近くの国宝から実物を観に行って、好きになるのもよし。話題の国宝にまつわる雑誌や書籍を読んで、詳しくなってから実物を拝みに行くのもよし。長い歴史を生き抜き、調査・審議された宝ですから、どちらの出会い方でも相応の感動が待っているはずです。

今回の記事に合わせて、国宝120年を記念して昨年創刊されたウィークリーブック「週刊ニッポンの国宝100」(小学館)を参照したところ、なんとこの国宝についても「国宝検定」なるものがあることがわかりました。「週刊ニッポンの国宝100」の内容から、初級は80%、上級は60%が出題され、合格者にはそれぞれ「国宝の案内士」の称号とバッジ、「国宝の伝道師」の称号とバッジが贈呈されるとのこと。

国宝検定実行委員会に話を伺ったところ、

土器やお城、絵画、刀剣など一口に国宝といっても、ジャンルは多岐にわたり、いざ勉強しようと思っても普段はなかなか難しいのが実情です。しかし昨年は国宝120周年。国宝への関心が非常に高まっています。国宝検定の受験勉強を機に、国宝や関連する歴史・文化に理解を深めていただければ、今後の国宝・美術探訪がより一層楽しめると思います

とのコメントをいただきました。確かに、「週刊ニッポンの国宝100」は幅広いジャンルの国宝を、豊富な写真と細かな解説というミクロな見方と、海外との比較や歴史の中の立ち位置などの俯瞰的な視点、両方からおもしろく紹介してあり、国宝に親しみが沸く内容になっています。50巻まで読み切ったころには、相当な知識が自然に積み重なっているに違いありません。

最後に、現在公開中の美術展で国宝に会うことができるものをご紹介します。

三井記念美術館では「国宝雪松図と花鳥 美術館でバードウォッチング」展(1/4~2/4)が開催されています。鳥が描かれた様々な作品が集められ、“バードウォッチング”を楽しめるという楽しい企画です。また、東京国立博物館の「仁和寺と三室派のみほとけ」展(1/16~3/11)では葛井寺の国宝千手観音を拝むことができます。「週刊ニッポンの国宝100」の第5巻「FILE9 三十三間堂」でも葛井寺の千手観音について詳しく紹介されていましたが、数ある千手観音の中でも本当に1000本(正確には1041本)あり、「すべての手に眼が墨書きされている」のだとか。 ぜひ実物を観に行きたいものです。

※ 小学館ウィークリーブック 週刊ニッポンの国宝100

http://www.shogakukan.co.jp/pr/kokuhou100/

参考資料 芸術新潮編集部編『国宝』新潮社、1993年

この記事を書いた人

青葉まどか

仙台市出身。趣味は本、音楽、映画、という典型的インドア(元)少女。ライター。腰痛持ちだが、時々喫茶店で手伝いもする。「やるなら楽しく、真剣に」がモットー。

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