身近な素材で 秋色に染める

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心の豊かさ

秋は散歩にうってつけの季節。街路樹や道端の草花を見ながらのんびり歩くのは、とても気持ちがよいものです。 「きれいだな」と鑑賞するだけでも良いのですが、「この草も染められるのでは?」という視点で見れば、外に出るのがさらに楽しくなります。染めることに興味が向いたら、家にあるもので試してみるのも一興。台所でできる染色についても紹介します。

道端の草木が 染色の材料に

外で目にする草木のほとんどが、実は染料になることをご存知でしょうか? 春はタンポポやスギナ、菜の花、ぺんぺん草。夏ならヨモギ、葛、ドクダミ。もしかしたら雑草として抜いてしまっているものもあるかもしれませんね。こうした身近な植物を使って、糸や布を染めることができるのです。

秋はススキやアザミ、セイタカアワダチソウ、萩や銀杏、金木犀の枝も染料になります。染料の種類と染める素材、媒染剤(※1)との掛け合わせによって、染まる色も様々。少し興味を持って調べてみると、草木を見る目が変わってきます。

※1 草木の色素を繊維に定着、発色させる役目。その役目を果たす薬品。(箕輪直子『誰でもできる草木染レッスン』誠文堂新光社 より)

マフラーを編むための毛糸を染めてみたことから染色の面白さに目覚めた友人は、いまでは外を歩けば「桜の葉だ。ピンクに染めたいな」、「どんぐりの帽子は、きれいなグレイになるんだよね」と、染めることを考えてしまうと言っていました。「植物たちが『持っていってちょうだい!』と言っているみたいに、目に飛び込んでくる」のだとか。

しかし、「落ち葉や枝で染めるなんて、面白そう」と気軽に思っても、初心者が始めるのはなかなか大変。作品をつくるために毛糸や糸を大量に染めるとなると、かなり大きな鍋が必要ですし、媒染剤の中には食用以外のものもあるため、道具は台所用具を転用するわけにはいきません(先述の彼女も草木染用にステンレスの大鍋を購入していました)。それに何しろ、それだけの枝や落ち葉を集めるというのも簡単なことではありません。

……と言いつつ、どうしても染色なるものをやってみたくなってしまったライター。すぐに材料を集められ、口に入れてよいものしか使わない染色に挑戦してみることにしました。

玉ねぎの皮が何色になるのか

今回試してみたのは、我が家でもとても身近な玉ねぎの皮を使った染色。何しろ普段捨ててしまう部分を使うのですから、気楽です。染める予定の1週間ほど前から、玉ねぎを使うたびに皮をバケツにストックしていきました。

対象物は、醬油染みがついてしまった白いナプキンと無地のコットンバッグ。染める際に必要な皮の目安は、染めるものの重量分程度ということなので、およそ30~50g。早速集めた皮の重さを量ってみると……なんとたったの5g! 一緒に染める気満々の娘を連れて、慌てて大量の玉ねぎを買いに走りました。

(※あくまで、必要な重さは目安です。参考にする本や教え方、また染料や素材の状態によって様々であり正解はない、ということをこの時は知らなかったのでした。)

10個の皮をむいて、やっと50gになりました。この薄茶色の皮を水切りネットに入れて鍋で煮ます。

煮汁が沸騰したら20分ほど弱火にかけ、火を止めます。鍋の中は赤ワインのような色。薄茶色の皮からこれほど濃く鮮やかな色が出るのは意外です。

煮汁を冷ましている間、染めるものに絞り模様をつける準備をしました。ちょうど古くなった小豆があったので、小豆7粒をまとめてゴムで縛りました。四隅にはゴムをランダムに巻き付けたり、片結びをしたり。どんな模様ができるのかは、染めてからのお楽しみです。

この状態で媒染液(今回は洗面器8割の水に焼きミョウバンを小さじ1/2ほど溶かしました)に浸け、30分ほど置いたら洗い流し、いよいよ鍋に投入します。

真っ赤な液に白いコットンを入れると、たちまち布は黄色に染まりました。再び火を点けて、弱火でゆっくりとまんべんなく色を浸みこませていきます。

10分ほどたったら火を止め、そのまま1時間放置した後、水道水で色が出なくなるまで洗います。7-8回は水を替えたでしょうか。色落ちしていかないか不安になりましたが、しっかり染まったようで、鮮やかな山吹色は変わりませんでした。はやる心を抑えて絞りのゴムをほどくと……。ゴムの部分には染料が入らず、はっきりと模様が浮かび上がりました。大成功で、娘も大喜び。陰干しをして、乾いたら完成です。

うちの中にも 材料はいろいろ

玉ねぎの皮以外でも、実は家の中に染料はたくさんあります。例えばコーヒーや紅茶、緑茶の茶カス。カレー粉やハーブ。賞味期限の切れたものがあれば、捨てずに染めてみると「無駄にした」という罪悪感も消えるかもしれません。食材ですから「鍋をダメにする」という問題もなく、いつものキッチンで気軽に染めを体験することができます。

薬局ですぐに安く手に入った媒染用の焼きミョウバンは、他の使い道といえば栗の甘露煮の発色や、茄子の漬物の色止めなど。使い切るのには時間がかかりそうです。せっかくなので、もう1枚のコットンバッグをコーヒーの出し殻で染めてみました。

こちらは、事前にバッグを豆乳汁に浸ける(たんぱく質を加えることでよく染まる。木綿製品で有効)という工程を増やしたにも拘らず、ほとんど染まりませんでした。カスが足りなかったのか、煮込み時間が短すぎたのか。もう一度、別の染料で挑戦したいと思います。

キッチン染色で大変だったこと

とても簡単な方法の染色を体験して、一番大変だったことは何だったでしょうか。それはズバリ、皮を必要量集めることでした!(笑) 『誰でもできる草木染レッスン』の著者はピーナツの薄皮を3年かけて集めたと書いてありました。気が遠くなりそうですが、染色をすればするほど、「これはどんな色になる?」という興味が強くなっていくのでしょう。

とはいえ、玉ねぎ10個分だったら、家族の人数にも依りますが2週間もみれば十分溜められそうですよね。もし興味が湧いてきたなら、まずは染料を集めるところから計画を始めることをお勧めします。(※10個の玉ねぎはこの後、カレーやサラダ、カット後冷凍……と、潤沢に活用させていただきました!)

ちょっと試してみることもできて楽しい染色。身近な素材から思いがけない色が出てくるときの驚きは、想像以上でした。思えば、かつて先人たちは当たり前のように自然の素材を染料にして、おしゃれを楽しんでいたのですよね。そんなことにも思いを馳せながら、簡単なところから楽しんでみてはいかがでしょうか。

【参考資料】

箕輪直子『誰でもできる草木染レッスン』、誠文堂新光社

山崎和樹(編著)『草木染 四季の自然を染める』、山と渓谷社

林泣童『草木染を楽しむ』、日本ヴォーグ社

この記事を書いた人

青葉まどか

仙台市出身。趣味は本、音楽、映画、という典型的インドア(元)少女。ライター。腰痛持ちだが、時々喫茶店で手伝いもする。「やるなら楽しく、真剣に」がモットー。

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