大人の女性の読む雑誌

カテゴリ名:
心の豊かさ

愛読誌、ありますか?

雑誌離れが進んでいるという現状は先月のマガジンバンクの記事でも触れた通りですが、多くの雑誌が廃刊する中、大人の女性向けの雑誌はニーズに合わせて細かくジャンル分けされて、豊富に揃っている印象があります。

それもそのはず、ターゲットの大人の女性たちは学生時代から20~30歳代のころに女性誌が花盛りだった世代。きらリズム読者の皆さんの中にも、女性誌が先導してきた時代の流行をめいっぱい享受してきたという方がいるのではないでしょうか。

雑誌で情報をキャッチすることに長けた、大人の女性に向けて作られた雑誌にはどんなものがあるのでしょうか。見比べてみました。

◆読者の年代特定系 
ファッションと新しい“ライフスタイル”で大人の「いま」を切り取る

 

近年、女性誌、なかでもファッション誌はターゲットの年代や年齢を細かく設定して、ピンポイントに刺さる情報を集める傾向にあります。

その流れを受けて“50代向け”として作られている代表的な雑誌が、光文社の「HERS」、集英社の「eclat」です。前者は前田典子、後者は富岡佳子と、雑誌の理想形を体現した女性をアイコンとしてフィーチャーしている点は、「CanCam」や「BAILA」をはじめとした女性ファッション誌の王道的つくり。

紹介されるファッションも30代~40代向けで紹介される雑誌の着こなしとあまり変わらないように見えますが、着ていくシチュエーションの設定が若者とは違います。子どもは一緒に行動しなくなり、夫と二人でカフェに行ったり、同窓会に出かけたり。TPOに合わせてシックにする、若作りに見えない、といった、大人ならではのニーズに合わせた提案は、その年代の理想の暮らしぶりを想像させます。

若いころから読んできたファッション誌の延長にあり、若々しく見えるファッション、「いま」を素敵に装うための指南が満載で、全体的に大人らしい「攻め」感があるのが特徴でしょうか。

こうしたファッション誌に加えて、最近ではライフスタイル全般の情報について、年代を絞って編集している雑誌も増えています。

宝島社の「大人のおしゃれ手帖」、講談社「おとなスタイル」などは、ファッションを多めに扱いながらも、家事、メイク、片付けなどの特集も充実しており、該当の年代なら幅広い層にゆるっと楽しまれそうな、オールラウンド感があります。若い頃よりは少し緩やかに、でも楽しく、よいものに包まれながらも堅実に……といった印象です。

「おとなスタイル」の「50代からは“居心地のいい私”になる」、「検証・おとなの“可愛い”はどこまで許されるのか」といったテーマからは、そうしたリアルな大人の情景が浮かび上がるようで興味深いです。

いずれにしても、年代特定系は読者が移り変わるという宿命を負っています。それゆえに、この年代の「いま」が鋭くキャッチされているかが重要なポイントだといえるでしょう。

◆年代不特定(ぼやかし)系 
長い年月をかけて守られてきた思想で、特定ファンをつかむ

ファッションや最近登場した“大人の”ライフスタイル誌で年代を特定するのに対して、年代を特定せずに、暮らしやファッションを紹介する、女性向けの雑誌があります。歴史が長く、古い読者を大切にしながらも新しい読者に対しても間口を開いていく編集には、それぞれの個性が強く表れています。

ミセス」(文化出版局)は旅、料理、ファッションなど扱うテーマが多岐にわたり、いずれも上質なもの、上品であることが徹底されています。5月号では「子ども時代に出会いたい本」、「子どもたちに届けたい木の贈り物」といった特集もあり、コア読者が母親世代となった娘と共にこの記事を見て、「孫にプレゼントしたいわ」などといった会話が聞こえてくるようです。家庭で読み継がれていくような、ある意味資産を含めた基盤がしっかりとした読者層をつかんでいる雰囲気に満ちています。

婦人公論」(中央公論新社)は、創刊から100年を超える長寿雑誌。お金の話や親の介護、熟年結婚といった特集はそれだけでも異色で、大人の女性が直面する悩みや想いを汲み上げ、かなり深く切り込んでいます。

HPで「美しく年を重ねている女性たちのために、豊かで艶めく生き方を提案します」という通り、「艶めく」という点で他誌よりも生々しさがある一方、文字で読ませるつくりは男性誌を思い起こさせる体裁。読者のページを開くと、愛読者の会が日本各地にあるらしく、本誌の読書会が続けられているようなのですが、メンバーはかなり高齢化している模様。母と娘についての特集もあり、この雑誌を親子で読むという図はあまり浮かばない以上、どのようにして下の世代を新たに取り込んでいくべきか。読んでみたら面白かっただけに、真剣に考えてしまいました。

そして、昨年NHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のモデルともなった、「暮らしの手帖」(暮らしの手帖社)。広告を入れず、何者にもおもねらない編集方針は、戦後の創刊時から変わることなく受け継がれています。時代に流されず、消費者の目線で確かな製品、よいもの、よい暮らしを追及しているのですが、その思想に共感する若い世代も講師やモデルとして多く登場するという柔軟さがあるためか、地に足の着いた「いま」が捉えられているように見えました。

年代不特定系から特定系に路線変更
Kuːnel」の挑戦

 

これまで見てきた「年代不特定系」から「年代特定系」へ、誌名をそのままに大きく路線変更した雑誌がマガジンハウスの「Kuːnel」(クウネル)です。以前の「Kuːnel」は、“哲学ある住まい。”や”本と料理”、”窓辺の緑。”など、独特な視点を持つカルチャー誌として世代を問わない愛読者層をつかんできました。が、2016年から路線を一転、年代を50代に特定した編集へと大きく舵を切ったのでした。

改編についてほとんど予告がなかったこともあり、当初はかつての愛読者からの反発や残念だという声がアマゾンレビューにも溢れ、ニュースに取り上げられるほどでした。が、イメージモデルをフランス人女性から小林麻美に変更し、アートディレクションもシフトチェンジするなどの微調整を加えながら、少しずつ新しい読者を獲得している気配です。

年代を特定して、その世代に必要な情報や悩みを吸い上げつつ、フランス人女性のような最新のモードに縛られないファッションを推す、という両輪で新機軸を模索しているように見え、今後どのように展開されていくのかが気になるところです。

大人の女性誌は、歳を重ねた分、情報にもファッションにも思想があり、工夫があり、濃さと軽やかさが絶妙に編集された面白いものばかりでした。愛読誌がある方もない方も、普段手に取ることのない雑誌をあえて開いてみると、新しい視点、新しい生き方を発見できるのではないでしょうか。

▼ あなたも読書が好きになる!知的美人の旅シリーズ▼

知的美人への旅~ 東京マガジンバンク(都立多摩図書館)
雑誌、好きですか? 私は大好きです! 新卒入社で配属されたのが雑誌を扱う部署だったこともあり、近年の雑誌離れや雑誌の売り上げの低迷とい...
知的美人への旅~ 立川まんがぱーく
まんが、読んでいますか? 読む方と全く読まない方とではっきり分かれるまんがですが、最近では料理やお酒、旅行や歴史をはじめ、よりマニアッ...

この記事を書いた人

青葉まどか

仙台市出身。趣味は本、音楽、映画、という典型的インドア(元)少女。ライター。腰痛持ちだが、時々喫茶店で手伝いもする。「やるなら楽しく、真剣に」がモットー。

最新記事一覧